本棚

■御松茸騒動
■朝井まかて
■2014.12(徳間書店)
若き尾張藩士が不作続きの松茸を管理する職に左遷される話。史実を絡めつつも小説としての展開はさすがだし、これまで読んだ小説の主人公は女性であるのに対して、この作品では男勝りの勝ち気な女性が端役で一人出るだけで、語り口もかなり違う。作品としては地味。しかし確かな作品。(2018.3)

■恋歌

■朝井まかて
■2013.8(講談社)
幕末から明治にかけて活躍した歌人中島歌子の波乱に満ちた生涯を流麗な文章で展開良く描いている。江戸の宿の娘として生まれた歌子が水戸藩士への思いを叶えるまでには、不覚にも青春時代のような瑞々しさに揺れた。単なる伝記物で留まらず、小説として読み応えがある。直木賞受賞作品。(2018.2)

■花競べ・向嶋なずな屋繁盛記
■朝井まかて

■2011.12(講談社文庫初版)2008年刊行
江戸時代に花師がいて、草木の品種改良を生業としていたとか。その若夫婦の話。作者のデビュー作。
文献で得た知識を見せびらかすのではなく、物語にうまく融合していて、展開も早く、飽きさせない。ただ、好みからすると、登場人物はもっと削られたか?(2018.1)

■阿蘭陀西鶴(オランダ西鶴)
■朝井まかて
■2016.11(講談社文庫初版)2014年刊行。
史実をそのまま書いたのではノンフィクションであり、それが小説仕立てにしていも読み手には教科書と変わりない。作者は西鶴の娘が盲目であったとの文献から、娘の視覚以外の感覚を通して西鶴を語らせている。少ない文献から紡ぐ艶やかな布は小説の真髄。この作家の作品は2作目だが、急遽、ネットで別の作品を注文。(2017.12)

■琥珀の夢(小説鳥井信治郎)
■伊集院静
■2017.10初版(集英社)
■読後感
サントリー創業者鳥井信治郎の立身出世話。明治維新前後からの船場界隈の話は身近で楽しめた。ただし、小説なら、信治郎の死後の記述は社史を読まされているようで無意味。左党ではないので「琥珀の夢」がウイスキーなのかビールなのかの区別もつきにくい(ビールが同社の懸案であったのは知っているが)。ロマンを追求した浪速商人のド根性物で仕立てられなかったのが残念。(2017.12)

■おもかげ

■浅田次郎
■2017.12初版(毎日新聞出版)
■読後感
浅田が得意とする時空を超えたストーリー展開。作者の作品は、一時期、会話中心で興醒めして遠のいていたが、この作品では簡潔かつ香り高い文章が、一部の章以外続いていて、読み応えがあった。筋の展開は新聞の連載だからか、多少蛇足的な部分も認める。しかし、全編を通して浅田流の詩的な世界が描かれている。(2017.12)

■ファイト
■佐藤賢一
■2017.5 初版(中央公論新社)
■読後感
小説に仕立てたのが不思議なほど特殊な作品。モハメド・アリの4試合を彼の語り口で進める以外の記述は殆どない。ボクシング用語は知っていても、試合はまず見ないのに、臨場感が伝わる。それだけではなく、モハメド・アリの栄光と挫折を幾多の戦歴から選んだ4試合で描き切っている。(2017.12)